





大学進学を迷う高校生、卒業後の進路を考える大学生に触れて欲しいと思う本は少なからずある。それは「自分自身がその時期に出会いたかった」本であることも少なくない。
本書は、2019年6月〜9月に瀬戸市新世紀工芸館「デザインーそれぞれの思考ー吉田守孝・田上知之介」展に合わせて作られたカタログながら、まさに「10代〜20代に触れてほしい」と思わせる内容だ。特にモノづくりや表現のの世界で生きていく可能性があるなら、強くオススメしたい。
なぜかといえば、吉田と田上がそれぞれプロダクトデザイナーと陶磁器デザイナーになり活躍するまでのプロセスを平易かつ赤裸々に語ってくれていて、二人の人生を追体験するかのような感覚になるからである。
そしてそれはこれから自らを社会に投じようとする人にとって、貴重な一つの(二つの)体験談として大いに参考になると思うからである。
本書の極めて良い点は「二人」の道のりを同時並行に読めることにある。(赤い文字が田上、青い文字が吉田、というデザインもわかりやすい)
育った環境や学びの環境など違うところはもちろんあるけど、デザインの考え方など共通する部分も少なくない。人の数だけ全く異なる人生があること、並行して共感したり尊敬する部分があって同じ道を歩く瞬間があること。まったく無関係だった二人が「デザイン」を志し、それぞれ試行錯誤したり想定外の出来事など経験しながら出会い、認め合う姿は読む人に希望を与える。
そのテキストを踏まえた上で二人の作品写真を観ると、当たり前のプロダクトデザイン/陶磁デザインを超えた物語が立ち上がってくる。展覧会とそのカタログがそれぞれの異なる役割を果たし、総合的に厚みが生まれているのも本書の優れた点である。
デザインや表現を志す、できるだけ多くの人に読まれることを切に願う。
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発行日|2019年6月
仕様|44ページ
サイズ|約182mm*256mm
言語|日本語
執筆|吉田守孝、田上知之介
デザイン|丸山晶崇(TO inc.)
撮影|本多康司、本浪隆弘、奥野規、深谷亨
会場撮影|奥野規
編集|横須賀雪枝、丸山晶崇(TO inc.)
印刷・製本|株式会社アトミ
発行人|吉田守孝、田上知之介
発行所|ヨシダ手工業デザイン室